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長田研の代表的な論文を紹介します

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研究論文14

高温高圧水中でのNN-ジエチルアセトアミドの高速ラジカル重合
Industrial & Engineering Chemistry Research誌、61巻、46号、17012ページ、2022年

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【要旨】サーキュラーエコノミー(循環型経済)や持続可能な化学産業の実現のため、低環境負荷なポリマー合成法が求められています。本研究では、NN-ジエチルアクリルアミドのラジカル重合を高温高圧水中(150 °C, 0.5 MPa)で行い、反応時間2分でモノマーが完全に転化することがわかりました。得られたポリマーの分子量は70℃の水中で重合したものと同程度であり、また150℃の有機溶媒中で重合した場合よりも高分子量かつ分子量分布が狭いことがわかりました。この原因としては、モノマーのカルボキシ基と水分子の水素結合や、不均化停止反応が抑制されたことが挙げられます。高温高圧水中を反応場としたラジカル重合反応は、短時間かつ低環境負荷であることから、工業的にも有望です。

研究論文13

機械学習による高温高圧水に対する有機物の溶解度予測
The Journal of Supercritical Fluids誌、190巻、105733ページ、2022年

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【要旨】高温高圧水中での有機反応の制御には、反応場の相挙動(均一相や液液2相)の把握が必要です。当研究室でもバイオマス変換を検討してきましたが、反応場で溶質が均一に溶解しているのかどうかを、知りたいと考えていました。

 この論文では、機械学習を用いて高温高圧水に対する有機物の溶解度の予測を行いました。機械学習では、一般に多くの実験値(学習データ)が必要ですが、高温高圧水中での溶解度データは少ないことが問題でした。そこで本研究では、常温常圧での水に対する有機物の溶解度の実験値も学習データに加えました。これにより、有機物の化学構造、水の温度、水の密度を入力することで、高温高圧水に対する様々な有機物の溶解度を予測することが可能になりました。

 (余話)長田研が機械学習に取り組むきっかけは、2020年春に2ヵ月ほど大学での実験が一切できなくなったことです。その間に、研究室全体で機械学習の取り組みを始めました。ピンチをチャンスに変えたいと思いました。今後も、様々な分野に機械学習を利用した研究を進めていきます。

研究論文12

水だけを用いた環境に優しいイカ中骨の利用:
βキチンナノファイバーと血圧降下作用ペプチドの生成
International Journal of Biological Macromolecules誌、189巻、921ページ、2021年

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【要旨】バイオマスは、糖鎖(βキチン)やタンパク質など複数の成分からなっていますが、現状では一つの成分を利用するために他の成分は廃棄されている例が多いです。
 イカ中骨は、βキチンとタンパク質から構成されています。現在は、βキチンを製造するために、アルカリ処理によるタンパク質の除去が行われてます。そのため、タンパク質は使用されずに廃棄されています。
 これに対し、本研究ではイカ中骨を高温高圧水で処理して、固体分としてβキチンを回収でき、液体分としてタンパク質が得られることを明らかにしました。さらに得られたβキチンをナノファイバー化した際の性状は、従来のアルカリ処理で得られたものと同程度であることを確認しました。また液体分として得られたタンパク質は、低分子量化された水溶性ポリペプチドであり、血圧降下作用があることも確認し、これは健康食品の素材として活用できます。
 以上より、高温高圧の水を用いることで、イカ中骨を構成するすべての成分を有効活用できることがわかりました。

研究論文11

αキチンナノファイバー分散液の物性におよぼすアセチル化度の影響

 International Journal of Biological Macromolecules誌、

 155巻、350-357ページ、2020年

【要旨】カニ殻由来のαキチンは、キチン分子鎖間の強い水素結合のためナノファイバー化が困難であるという問題があります。これに対し、αキチンの表面を脱アセチル化して、酸で溶解させた上でスターバーストによる湿式解繊を行うことで、容易にナノファイバー化できることを見出しました。またアセチル化度から、得られるナノファイバー径を予測する右図のモデルを提案し、実測値と一致することを確認しました。

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研究論文10

高温高圧水中でのN-アセチルグルコサンの含窒素化合物への変換

Fuel Processing Technology誌、195巻、106154ページ、2019年

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【要旨】N-アセチルグルコサミン(キチンを構成する単糖)を高温高圧水中で処理することで、脱水反応を進行させ、含窒素化合物を得ました。また反応条件(温度や時間)を制御することで、主生成物をコントロールできることも明らかにしました。

研究論文9

高温高圧水中でのキチンからの含窒素化合物の無触媒合成

International Journal of Biological Macromolecules誌、136巻、994-999ページ、2019年

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【要旨】キチンを亜臨界水または超臨界水中で処理することで、無触媒下でも「加水分解」と「脱水反応」が進行し、窒素を含む化合物が得られることを明らかにしました。再生可能資源であるキチンから、含窒素化合物を得る新しい方法です。

研究論文8

純粋なセルロースナノファイバー分散液の水熱ゲル化

 ACS Applied Polymer Materials誌、1巻、5号、1045-1053ページ、2019年

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【要旨】化学修飾されていないセルロースナノファイバーが水中に分散した液を、高温高圧条件下で処理することで、自立可能な強度のハイドロゲルにできることを見出しました。本手法では、セルロースと水しか用いていないため、医療分野などに応用可能な新しいハイドロゲルの製法です。

研究論文7

凍結乾燥によるβキチンナノファイバーのエアロゲルの調製

International Journal of Biological Macromolecules誌、126巻、1145-1149ページ、2019年

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【要旨】キチンのナノファイバーが水に分散した液体を、凍結乾燥し、スポンジ状のエアロゲルを作製しました。本論文では、ナノファイバー径がエアロゲルの機械的強度におよぼす影響を明らかにしました。

研究論文6

キチンナノファイバーの水熱ゲル化による高強度ハイドロゲル調製と

「厳しさ係数」による性状の予測

 Cellulose誌、25巻、6873-6885ページ、2018年

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【要旨】キチンのナノファイバーが水に分散した液体を、高温高圧条件下で処理すると、自立可能な強度のハイドロゲルが作製できます。本論文では、透明度や機械的強度などのハイドロゲルの性状を予測する手段として、厳しさ係数ROという温度Tと時間tからなるパラメーターを導入しました。厳しさ係数を用いることで、欲しい性状のハイドロゲルを自在に作製できることを明らかにしました。

研究論文5

キチンナノファイバーの動的粘弾性測定 -濃度、粉砕回数、酸量、結晶構造の影響-

 International Journal of Biological Macromolecules誌、102巻、358-366ページ、2018年

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【要旨】αキチンおよびβキチンのナノファイバー分散液の動的粘弾性測定を行い、水中での微細構造を調べました。その結果、中性条件では常に弾性挙動を示しましたが、酸性条件では濃度の増大とともにコロイド分散状態、臨界ゲル状態、弾性挙動を続けて示すことがわかりました。

研究論文4

水熱ゲル化による添加剤を用いない

自立可能な強度のTEMPO酸化セルロースナノファイバーのハイドロゲルの調製

 ACS Biomaterials Science & Engineering誌、4巻、1536-1545ページ、2018年

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【要旨】TEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN)は、大量生産可能な新しいバイオマス素材として注目されています。TOCNが水中に分散した液は、液体のゲル状であり、強度(硬さ)や形状を変えるためには、酸や架橋剤などの化学物質を添加する必要があります。

 本論文では、TOCNが水中に分散した液を、高温高圧条件下で処理することで、自立可能な強度のハイドロゲルにできることを見出しました。本手法では、化学物質を用いていないため、医療分野などに応用可能な新しいハイドロゲルの製法と言えます。

研究論文3

α-およびβ-キチンナノファイバーの物性におよぼす酸量の影響

 International Journal of Biological Macromolecules誌、102巻、358-366ページ、2017年

【要旨】キチンナノファイバーは高い生体親和性などから、新たな医療材料や化粧品素材としての利用が期待されています。一方で、キチンナノファイバーは水に分散した状態で得られ、これを材料として利用するためには、ナノファイバー分散液の性状(透明度や粘度)を自在にコントロールする必要があります。

    本論文では、イカ中骨由来のβ-キチンや、カニ殻由来のα-キチンをナノファイバー化し、酸の添加量を制御することで、ナノファイバー分散液の性状をコントロールできることを見出しました。またβ-キチンとα-キチンの結晶型の違いにより、酸添加に対する性状の変化が異なることも明らかにしました。

研究論文2

β-キチンナノファイバー物性におよぼすイカ中骨からのβ-キチン精製方法の影響

 International Journal of Biological Macromolecules誌、91巻、987-993ページ、2016年

【要旨】キチンナノファイバーは大表面積、生体親和性、優れた保水性のため新たな医療材料や化粧品素材としての利用が期待されています。本論文では、イカ中骨からβ-キチンを精製する工程順(酸処理(脱灰)、アルカリ処理(脱タンパク)順)を変更することでナノファイバー化した後の物性が大きく変化することを明らかにしました。β-キチンを精製する際に酸処理で終えたβ-キチンナノファイバーは高粘度で透明な分散液に変換され、一方でアルカリ処理で終えたものは低粘度で白濁な分散液に変換されました。

 右上ボタンの論文ホームページには、キチンナノファイバーの3D動画もあるので、是非ご覧ください。

研究論文1

カニ殻の性状と酵素糖化におよぼす超臨界水・亜臨界水処理の影響

 Carbohydrate Polymers誌、134巻、718-725ページ、2015年

【要旨】カニ殻を超臨界または亜臨界水(高温高圧水)で処理し、キチンと無機分の混合物を固体として得て、タンパク質を水溶液として除去します。このキチンを含む固体を酵素処理し、キチン2糖に効率的に変換できることを見出しました。
 通常、カニ殻からキチンを得るには、酸で無機分を除去し、アルカリでタンパク質を除去します。そのため、酸・アルカリの廃液処理が問題となっています。本研究では″水″だけを使った環境に優しい前処理を提案しています。 
 キチンを対象とした研究は数多く行われていますが、通常は酸・アルカリで精製した試薬のキチンを原料としています。そのキチン原料自体をどのように製造するべきかも、もう一度見直す必要があると思います。
 

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